Char自身が身に着けるアイテムへのこだわりや、表現者がオリジナリティを形成していく過程などについて話を聞いた。ギタリスト・Charインタビュー(3/3)

ギターを抱えた時の自分が
どんな格好をしているのかは
常に意識しているよ
──改めて『ファッションと音楽』は、古くからどのような関係性だったと思いますか?
やっぱり切っても切り離せないよね。音楽が鳴っているところって、人が集まるところだと思うんだよ。教会とか、中世ヨーロッパだったら晩餐会とかね。そこにはある種のドレスコードが存在するわけで、今の言葉で例えるなら「コスプレ」なんだと思う。同じようなセンスを持った人たちが集まるイベントが開催されて、その場に合ったバンドを雇う、みたいな時に、ひょっとしたらバッハに「今度のイベントはこういうテーマなんだけど、良い感じの曲作ってくれない?」みたいなやりとりががあったかもしれないじゃん(笑)? で、観に行く側も場所に合った服装を考えたりして……今でもクラシックを鑑賞する時は正装して観に行くというノリもあるからね。まぁ、現代社会では素っ裸のまま生きてはいけないから必ず何かを身にまとわなければいけないし、日本には春夏秋冬があるから、その中で着る服を楽しみたいって気持ちになるんじゃないかな。

──白いスーツやムスタングは、Charという表現者の存在を強烈に印象づけたと思います。身に着けるアイテムの着こなしで気をつけていることはありますか?
ギターを弾く時は、右腕の袖はまくれないと嫌だし、右手には指輪すらしたくない。こだわりと言えば……それくらいかな。ただ俺自身はずっと「こういう着こなしをしている奴ってほかにいないよな」っていう「崩し・はずし」の美学みたいなことは、いつも考えていることかもしれない。それはゴルフでもそう。今ではかなり自由だけど、始めた当時は「え? こんなダサい服を着てやるの?」みたいな感じだったから……そこは俺なりに工夫した。この格好だったら誰にも文句言われないだろうなっていうドレスコードを自分で作るというか……例えばゴルフをするのにサーフ系のアイテムを組み合わせてみたりしてね。そうやってパンツにしてもウェアにしても、一緒にラウンドする人から「それどこで買ったの?」って言わせるというか(笑)。もちろんスポーツだから体を動かしやすいのが一番なんだけど、自分のこだわりを入れようと考えているかな。今でもそこは工夫する。

──なるほど。では今でも必ず身につけているアイテムはありますか?
あまりないね。ただ昔、女性のファッション・デザイナーの方に「あなたみたいに首が長い日本人はなかなかいないから、ハイカラー(丈の高い襟)のシャツは似合うんじゃない?」って言われて。それがきっかけで首にバンダナやスカーフを巻いたり、ネックレスを着けてみたり……首元で遊ぶようになったかな。いまだにそういう格好をしているね。

──ステージで音楽を表現するCharさんに欠かせないのが「ギター」です。極端な話かもしれませんが「ギターに合う」という基準で服を選んでいたりは?
もちろんある。ギターは「楽器」なんだけど、肩にかけて身に着けるということで言えばファッション・アイテムでもあると思うんだ。俺が当時誰も使っていなかったムスタングを選んだ理由も同じだよ。「子供の頃、楽器店のショーウィンドウに飾ってあったコイツに憧れていたんだよな」みたいな……ある種、憧れていた古着に出会ったような気持ちだったのかもしれない。やっぱりカッコ良いものじゃないと練習にも身が入らないし、人前に出ようなんて思わないからね。Charを表現するのにエレキ・ギターは欠かせない存在だから、抱えた時の自分がどういう格好をしているのかってことは常に意識しているよ。


──改めて、自分自身を表現するファッションの魅力、着飾ることの素晴らしさについてひと言お願いします。
例えばフォーマルなスーツであっても、カジュアルな格好でも、パジャマであっても、「今日違うな」って感じてしまったら1日ダメになってしまうことってあると思うんだ。納得できないまま出かけてしまうと、いろんなことがうまくいかないというか……気分がノってこない時ってあるじゃん? だからこそ、何かを表現する人にとってファッションというのはすごく重要な要素だと思うね。あと、今思い出したけど、中学生の時にバスケと並行してブラスバンド部を手伝っていたことがあって、学校に置いてあった楽器をひと通り手にして、鏡でチェックしてみたんだよ。そしたらどれも全然似合わなくて(笑)。トランペットやクラリネットのような管楽器やヴァイオリンなんかにも興味はあったんだけど……見た目から上手に演奏できそうな感じがしなかった(苦笑)。でも唯一、フルートだけはアリかもって思ったかな。ジェスロ・タルもいたしね。だから「自分に似合うもの」を身に着けるってことも重要なんじゃないかな。加えて「似合っているかどうか?」を自分で決められるようにならないといけない。
やっぱり俺らの時代は、今みたいにいろんなデザインの服が世の中にあったわけではないから、自分で考えて工夫していたんだよ。ストレートのジーンズに布を足してフレアにしたり、近所のオバちゃんに教えてもらってシャツに刺繍したりしてたしね。音楽に関しても同じで、当時は外タレ(海外アーティスト)も来ないし、新作も半年遅れだし、映像もないから、自分で欲しい情報をどうにかして取りに行くしかなかったんだよね。そうなると不確かな情報もたくさん出てくるんだよ。曲を耳でコピーするにしても、俺と友達では同じフレーズでも弾いているポジションが違ったりしてさ。でも、そういう勘違いや誤解がその人の「オリジナリティ」を形成すると思うんだ。そういう個性は、もともと存在していたものを取り入れて、自分のものになった瞬間に生まれると思うからね。
日本の音楽史において欠かせない名盤『Char』で白いセットアップを身に着けた理由や多忙を極めたデビュー当時の思い出について語ってもらった。ギタリスト・Charインタビュー(2/3)☞戻る
海外のギター・ヒーローに憧れた少年が音楽だけでなくファッションに目覚めるきっかけについて当時を振り返ってもらった。ギタリスト・Charインタビュー(1/3)☞戻る

PROFILE
Name: Char
DOB: 1955/6/16
POB: 東京、日本
Occupation: ギタープレイヤー
公式サイト(ZICCA.net)
Char Offical Channel(Youtube)
Char Official Instagram Account
Char*moc BAND COLLAR SHIRTS
Charとmocのコラボレーション・アイテムとして制作されたオリジナル・バンドカラー・シャツ。「Charを着る」をコンセプトに、男性だけでなく女性でも身に着けられるようにデザインされたこだわりのアイテムに仕上がっている。ぜひこの機会に手にとってみてほしい。身幅と腕まわりにゆとりを持たせたサイズで仕立てられており、胸元にはCharとmocの象徴的なロゴとサインが同系色でさりげなく刺繍されている。携帯や財布といった小物類がザクっと入る前身頃ポケットもこだわりのポイントのひとつだ。薄手羽織の感覚で着ることができ5月から10月頃まではアウターとして、冬にはコートやジャケット下にも着用できるる便利なアイテムといえるだろう。
■お知らせ
只今、NAVY及びBROWNのSIZE1は品切れ状態となっております。入荷次第、お知らせが必要な方は、LINEよりお問合せを頂くか、shop@mocmmxw.com までご連絡頂きますようお願い申し上げます。


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