日本の音楽史において欠かせない名盤『Char』で白いセットアップを身に着けた理由や多忙を極めたデビュー当時の思い出について語ってもらった。ギタリスト・Charインタビュー(2/3)

俺の中で「こんなはずじゃない」って
抵抗するような気持ちを
ファッションで表現していた

──デビュー当時のCharさんと言えば、アルバム・ジャケットでも見に着けていた白いセットアップ・スーツがすごく印象に残っています。

あのスーツも自前だね。基本的に、デビューしてからの衣装も全部自分で用意していたよ。1stアルバム(『Char』/76年)の時は、印象的なジャケットにしたいと思っていて……ちょうどボズ・スキャッグスがスーツ着てベンチに座っているレコード(「ロウダウン」/76年)を見た時に「なんかカッコいいな」って思ったんだよね。ちょうどAORのように洗練された音楽やファッションにも影響された時期だったし、ラフなTシャツとジーンズもいいけど「裸に真っ白なスーツもカッコいいんじゃないかな」って思ったんだよね。で、「俺はまず日本一になるから富士山に行こう!」ってカメラマンのタムジン(田村仁)とふたりで、古いフォルクスワーゲンに乗って河口湖まで行ったんだよ。で、夕暮れ時。富士山のシルエットが良い感じに出た一瞬の間に撮ったカットをジャケットに使ったんだよね。


──そうだったんですね。発売から45年が経った今見ても、カッコ良いデザインだと思います。

やっぱり12インチ・レコードのサイズだから表現できたデザインだったと思う。人物はアップの写真じゃないし、中央にもいない。ましてやギターも持ってない。ポニーキャニオンの一室で、コンタクトシートを眺めながら写真を選んだんだけど、人によっては「なんで横向いているの? 真正面のカットがいいんじゃない?」とか「なんでギター持ってないの?」って言ってくる人もいるわけよ。でも、俺はこれがいいなって思ったんだ。


──当時の歌番組にも白いセットアップで出演していたと思いますが、同じデザインのスーツを何着か持っていたんですか?

いや、スーツはあの1着を着回していたんだよね。だからツアーが始まると、ライブが終わるたびに汗でびしょ濡れになってしまうから、「ジャージの生地でいいからすぐに乾く素材にしてくれ」って頼んで特別なパンタロンを作ってもらったんだよ。やっぱり裾が広がっているフレア・パンツだと、ブーツを履いていても脱ぎやすいんだ。ちゃんと実用的なデザインになっているんだよね。それを毎回ライブが終わってからホテルで水洗いしてたな。一番忙しい時期はそんな感じだった。やっぱり着脱がめんどくさいのは一番嫌なんだよ。「有事」の際にズボンを脱ぐのに手間取ったらチャンスを逃しちゃうじゃない(笑)? せっかく良い感じになったのに「ごめん、ちょっと待ってて……」っていうのは、気持ちが冷めるどころの騒ぎじゃないからさ。


──たしかに(笑)。1978年に結成したJOHNNY, LOUIS & CHAR(以下JL&C)では、またラフな服装になっていった気がします。

白いスーツから始まって、テレビにも出るようになり、段々とキレイな格好をしていることにも反発したくなって……ちょっと鬱々としたところが出始めた頃だね。Tシャツとジーパンに裸足で『夜のヒットスタジオ』に出たりしてさ。髪も伸び放題だったし、忙しかったこともあってガリガリに痩せてしまって。だから俺の中で「こんなはずじゃない」って抵抗するような気持ちを身に着けるファッションで表現していたのかもしれない。「ロックの貴公子」みたいなイメージで売り出されて、フリルの衣装を着させられた時代もあったりしたしさ。アルバムで言えば『THRILL』(78年)の頃だけど、実際に“スリル”が欲しくなっちゃったんじゃないかな(笑)? この作品に収録されている「表参道」では、「Ah~やだやだ、こっちが恥ずかしい」って歌っているんだけど、ここは人のことを歌ったというよりも、実は当時の「自分のこと」を歌った曲だったりするんだよ。だからこの作品の後になって組んだJL&Cでは、それまでの活動の反動からヒッピー的な原点に戻っちゃったんだと思う。


──より自身の表現が自然体になっていったんですね。


そうだね。しかもJL&Cの時は、俺たちずっと普段着でステージに出ていたしね。やっぱりJL&Cのおふたり(※ルイズルイス加部、ジョニー吉長)は、いつも着こなしがキマっていたし、立ち姿だけですでにカッコ良かった。武道館でやった時なんかは、マーちゃん(ルイズルイス加部)がコーデュロイのロングコートを着て会場入りしたんだけど、本番の舞台もそのままの格好で出ていったからね。俺も野音でやった時は、リハをやるのがめんどくさいから本番直前に行って、パジャマのままライブをやったりもしたよ(笑)。それが70年代後半から80年代前半の頃かな。


──80年代に入ると音楽もファッションも大きく変化し始めます。

70年代後半~80年代初頭って、みんなが同じ格好をし始めた時期で、俺としては「ファッションが一番カッコ悪い」と思っている時代なんだよ。バブルの時にDCブランドができて、あそこで変わってしまった気がする。全員が同じ髪型で、全員が同じようなスーツっぽい服装で……ものすごく個性がなくなっていった時代というか。それは世相がそうさせたって感じもするけどね。それこそミュージシャンもダサい格好になってきて「なんで?」って思ってた。忘れもしない、ある取材でライターから「今時、長髪でフレアのパンツを履いている人なんてプロレスラーくらいしかいませんよ。なんで時代に逆行するの?」ってことを言われたんだよね。俺としては逆行しているつもりはさらさらなくて。誰かの着せ替え人形ではなく、一番自分らしくいるために必要な「表現」だったんだよ。ギターに関しても「これからはヴァン・ヘイレンのライトハンド奏法のように派手なプレイをしたほうがいい」なんてことも言われた。もちろん楽曲の表現に必要だと思ったら取り入れるけれど、ただ「流行っている」という理由だけで、なぜ自分に無理をしてまでやらなきゃいけないんだって感じだった。もちろんエディはうまいし、見ていて楽しいけど、同じことを「やりたい」とは思わなかった。チューニングの狂いにくいギターや新しいエフェクターもたくさん登場した時期だけど、楽器もファッション・アイテムも自分の心に響かないものは手にする必要がないからね。

海外のギター・ヒーローに憧れた少年が音楽だけでなくファッションに目覚めるきっかけについて当時を振り返ってもらった。ギタリスト・Charインタビュー(1/3)


自身が身に着けるアイテムへのこだわりや、表現者がオリジナリティを形成していく過程などについて話を聞いた。ギタリスト・Charインタビュー(3/3)

PROFILE
Name: Char
DOB: 1955/6/16
POB: 東京、日本
Occupation: ギタープレイヤー
公式サイト(ZICCA.net)
Char Offical Channel(Youtube)
Char Official Instagram Account


Char*moc BAND COLLAR SHIRTS

Charとmocのコラボレーション・アイテムとして制作されたオリジナル・バンドカラー・シャツ。「Charを着る」をコンセプトに、男性だけでなく女性でも身に着けられるようにデザインされたこだわりのアイテムに仕上がっている。ぜひこの機会に手にとってみてほしい。身幅と腕まわりにゆとりを持たせたサイズで仕立てられており、胸元にはCharとmocの象徴的なロゴとサインが同系色でさりげなく刺繍されている。携帯や財布といった小物類がザクっと入る前身頃ポケットもこだわりのポイントのひとつだ。薄手羽織の感覚で着ることができ5月から10月頃まではアウターとして、冬にはコートやジャケット下にも着用できるる便利なアイテムといえるだろう。

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