「音楽が生活手段になっちゃったら嫌だろうな。プラスアルファが良いの!細い年金プラスアルファ!いやー嫌な言い方だなワハハハ」バッパーズ吾妻光良のご機嫌な生き方。(2/2)

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INTERVIEWS:
吾妻光良 / ブルースギタリスト、バンドリーダー

日本一のジャンプ&ジャイブギタリストの吾妻光良の軽やかでウィットに富んだそのスタイルに迫る。

スイングしなけりゃ意味がなかった1930年から40年頃の黒人大衆音楽。音を楽しむと書いて音楽。世が暗くとも「音が苦」であってはいけません。小粋に意味不明なナンセンス・シラブルを乱発し、妙味のある笑いで聴衆を笑いの渦に巻き込む芸達者なミュージシャンたち。激しいシャウトに、どデカい音で熱狂を誘うサックスのブロウ。ブギウギもラグタイムもスイングもジャンプもマンボもラテンもカリプソもごっちゃ混ぜにしてエンターテインメント性を追求する精神。それがジャイブなのです。日本の偉大な’’ミスタージャイブマン’こと’バッパーズの吾妻光良氏にその音の魅力について話を聞いた。

黒人の愛の深さ、本当にみんなに聴いて欲しいなぁ。全然モテない自分とさ、世界平和を並列に論じてるこの男ワハハハ。

パーシー・メイフィールド『プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラブ』って曲。これを聴いて感動しない人はいるのかな。戦後間もない1950年8月16日に吹き込んでる。今一番聴いて欲しい曲。

神様お願いです
全人類に理解と心の平和を送ってください
もし頼みすぎでなければ
私に愛する人をくれますか

かっこいいいーーー(泣)。この凄い小さい自分の話と世界を一緒にしてるのがすごく感動的で詩的だね。

世界に聞かせてやってくださいよ
どうやってうまくやっていくのか
憎悪さえ過ぎ去れば平和がやってくるでしょう
そしてもしも望みすぎでなければ
俺に愛する人をください

かっこいいいーーー(泣)。もうこれサイコーなんだよ、何でこんな歌詞が書けるんだろう!究極の反戦ソングなんだよ。

夜中に目が覚めて
嫌だなと思う時、俺の答えはいつも同じ
人々をこの忌むべき罪から救ってくれ
このままじゃ全世界は炎に包まれる
なんてこった!
俺がこんな悲哀に満ちてるからと言って
俺は憐れんでくれというつもりはないよ
でももしよければ俺に愛する人をください

かっこいいいーーー(泣)。こんな素晴らしい歌があるのか!パチパチパチ手拍子。黒人の愛の深さ、本当にみんなに聴いて欲しいなぁ。全然モテない自分とさ、世界平和を並列に論じてるこの男ワハハハ。凄い歌詞でしょ!?自分とデカい世界を対比させるっていうさ。戦争反対とかって曲もいっぱいあるだろうけど、こっちに自分の暮らしがあるってことを並列にちゃんと歌うというのはね、うんコレは天才じゃなきゃ書けない。そうそうちなみに彼はポエット・オブ・ザ・ブルーズといわれてるんだよ。俺さ、どうしてもパーシー・メイフィールドの真似がしたくなっちゃったの。それで『しかしまあなんだな』って曲で、景気も悪いし、若いやつに仕事もなくて大丈夫かよ!ところで俺のメガネどこにあるんだ!?っていう曲を作っちゃった。パーシーメイフィールドもそうだし、ルイ・ジョーダンそうだし、ジャイブもアーリーR&Bも、もう本当に心から愛してるの。

*パーシー・メイフィールド(Percy Mayfield)
アメリカ西海岸が誇る「ポエット・オブ・ザ・ブルーズ」。レイ・チャールズの代表曲として知られるようになった『Hit The Road Jack』も彼の作品。洗練されたソングライティングも間違いないが、1952年発売のラテンマンボR&Bチューン『LOUISIANA』も必聴。

変な言い方だけど、他人からみたらサラリーマンっぽいのが染みついちゃってるとこがあるんでしょうね。如何に費用を最小化し、収益を最大化するかってとこをAzoomaツアーズではやってますワハハハ。

母さんが近所の子供にピアノを教えてたり、兄貴がドデカい音を出すハードロッカーなんだけど、音楽的な影響はあまりない(笑)。親には感謝してますけどね、ピアノなんて楽しいものがあるってことを教えてくれましたから。当時は嫌でしょうがなかったけど、今じゃ酔うとすぐにピアノ弾いちゃう。大学生になるとロッククライミングっていうふざけた名前のサークルに入るんだけど、その実態はブルース・サークル。だってブルース聴かないやつは人間じゃないわけだから(笑)。朝必ず10時に部室に行って、実験演習で抜けて戻ってきて19時くらいから溜まり場の喫茶店に行って、お酒を奢ってもらって帰るという日々です。もうレコード聴いて真似する、ただそれだけ(笑)。お金などなくても、食べるものなどなくてもレコードはかじる(笑)。ただそれだけなんだけど、やっぱり実りの大きな時期でしたね。人間そういう時期にほんと全部形成されちゃうんだろうな。だから皆さんどんどんレコードをかじっちゃってください。

大学3年生の時に永井隆さんのバンドにいたの。それでこれはひょっとしたらプロになれるんじゃないか!?と思ったりしちゃったの。当然就職みたいな話があるんだけど、のらりくらりやり過ごしてる時に、毎日新聞の日曜版にバンドが全面に取り上げられるんですよ。おーし!これを見せれば母さんも納得してくれるだろう!!と思って見せたんだ。
母「あらー!あんた凄いわね!」
吾妻「俺、プロになろうと思うんだ」
母「そんな風に育てた覚えはない!」
吾妻「一年だけやらせてくれ!一年の間にはそこそこ成果は出るはずだから!」
そしたら成果がまったく出なかった(笑)。親をそこまで泣かせる訳にはいかなく就職したって流れですね、普通っワハハハ。

今思えばね、バンドにも会社にも両方に迷惑かけっぱなし。急な仕事でライブに行けなくなっちゃったりするの。馬鹿だから平日にライブ入れちゃったりするから、人間としていかがなものかと、、、。でも自分では非常にアプローチがサラリーマン的なんだろうなと思いますけどね。変な言い方だけど、他人からみたらサラリーマンっぽいのが染みついちゃってるとこがあるんでしょうね。例えば、地方のライブハウスに呼んでいただくと、サラリーマンの出張経験から、お土産を持ってかざるをえないとかね。体がそれを欲してしまっているんだ!(笑)。そう言うのはありますよね、酒場から電話がかかってきて、
店員「12人で予約頂いているんですけど、うち10時でラストオーダー終わっちゃうですが大丈夫でしょうか!?」
吾妻「あ、そうなの!?じゃあどっか近くの酒場知らない?」
とかって大変なんですよ12人のフルバンドをマネジメントするのはさ(笑)。それこそアレンジとか、俺が書いておかしいところは奴等に聞くし、音楽的にまとめ上げるってことは出来ないんだけどバンドは集団行動だから、そこをうまくやるのはグッドなんだよ。俺はねAzoomaツアーズと呼ばれてるの、そこの仕切りは苦にならない(笑)。サラリーマンをやってた経験上、どれだけ言われようと「はい!はい!はい!」って言えちゃう。如何に費用を最小化し、収益を最大化するかってとこをAzoomaツアーズではやってますワハハハ。

*永井“ホトケ”隆
1972年、ウエストロード・ブルーズバンドを結成。上田正樹とサウス・トゥ・サウス、憂歌団と共にブルーズムーブメントのはしりとなる。1977年、吾妻光良(現スウィンギング・バッパーズ)チャールズ清水(元ソー・バッド・レヴュー)小堀正等と共に「ブルー・ヘヴン」を結成。B.B.KINGはじめジェフ・ベック、ニューヨーク・ドールズ、オノ・ヨーコ、アルバート・キング、ロバート・クレイなどとも共演する日本ブルーズ界の重鎮。

これだけで食おうと思ったら無理だよね。これが生活手段になっちゃったら嫌だろうな。プラスアルファが良いの!細い年金プラスアルファ!!いやー嫌な言い方だなワハハハ。

昔の楽団なんかは大変だと思いますよ、あの人たちはそれが生活だからね。悪い言い方かもしれないけど、バッパーズは生活ではないからね。バンドだけで暮らしてるやつはいないからそこは楽だね。これだけで食おうと思ったら無理だよね。これが生活手段になっちゃったら嫌だろうな。プラスアルファが良いの!細い年金プラスアルファ!!いやー嫌な言い方だなワハハハ。ワイノニー・ハリスって人は50ちょっとで死んだけど最後はガス代払えずに死んだんだって。彼の家には「ミスターブルースイズヒア」って書いてあるネオンサインがあったんだよ。でも我儘ばっかり言ってるから売れなくなっちゃた。良い人でいるってのは大切なんですワハハハ!

長く続けててもさ、馬鹿だからマンネリは感じないですね。時々、もう少し曲増やさないとなとは思うんだけど、、、。思うんだけど何にもしない(笑)。それこそ毎日聴いてるものの中で、あーこれやりたい!ってのが出てきて、それを急に訳し始めたりしたりすることがあるんだけど、そういうのが出てくるうちは何とかなってるのかもしれないね。僕は楽器持てなくなっても店まで行くだろうなぁ。レス・ポールって人は死ぬ直前までやっててボロボロだったんだけど「あーまだ演奏してるんだ」ってのを見て感動してる人もいるんだよなぁ。ピアノ弾きはリハビリに良い指をずーっと動かしてるでしょ?だからピアニストは寿命が長いんだって言われてあーなるほどなってずーっと思ってたの。でもさビッグ・ジェイ・マクニーリーっていうサックス吹きがいて、ガーー頭振って、あんなバカデカい音だしてさ超絶的な吹き方をするから脳が変になりそうなんだけど80過ぎてもバリバリ吹いてた(笑)。管楽器とシャウターは絶対に早く死ぬぞ!って言われてきたのにな。なんだよ結局は個人のものなのかよっ!そうなのです、だから俺も明日から気をつけよう。あっ!気をつけるんで白ワイン一本追加お願いします!二本までは大丈夫ワハハハ…(了)

*レス・ポール(Les Paul)
ギブソン初のソリッドボディーのエレクトリック・ギター、「ギブソン・レスポール」の生みの親である。エレアコが主流だった時代に、ピックアップを装着し、アンプを通して出された音がボディに反響することがなくなったこのソリッド・ボディは、ロックンロールの発展に繋がった。
*ワイノニー・ハリス(Wynonie Harris)
ユーモラスで時にはブラックジョークの効いたセクシャルな歌詞を特徴とするブルーズ・シャウター。1942年にラッキー・ミリンダーに見出されアポロシアターでデビュー。Philo Records、Apollo Records、Bullet Records、Aladdin Records、King Recordsでセッション、レコーディングを録音し続けた。

☞日本一のジャイブマン吾妻光良。小粋なユーモアと風刺で聴衆を虜にするのがジャイブなら、ルイ・ジョーダンも、ジョー・ストラマーも、野生爆弾くっきーもジャイブなのです。(1/2)


1956年2月29日東京都新宿区に生まれ。大学在学中に「ロック・クライミング」なる実態はブルース愛好家サークルの部長をつとめる。妹尾Weeping Harp隆一氏のバックで初レコーディングを経験。その後、永井隆&ブルーヘブン、ダーティー・ダズン、E-Changブラザーズなどを経て、1979年秋、スウィンギン・バッパーズを結成。EGO-WRAPPIN’、岸田繁(くるり)民謡クルセイダーズ、永積崇(ハナレグミ)、浜野謙太、スカパラから星野源まで、ルーツミュージックを愛する多くのミュージシャンから尊敬される日本の偉大なるミスタージャイブマン。

Profile
Name: 吾妻光良
DOB: 1956/2/29
POB: 東京、新宿区、日本
Occupation: ブルースギタリスト、バンドリーダー
https://s-boppers.com

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