イーストサイド、知的でユーモラス、ファッショナブルでパンキッシュ…オールドでもニューでもない新しい波。EGO-WRAPPIN’森雅樹とs-ken&far east sessionsはそんなキーワードで繋がっている。
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INTERVIEWS:
森雅樹(EGO-WRAPPIN’) ミュージシャン
森雅樹が奏でるギター、創り出す節(リフ)には、音楽に対する深い愛を感じずにはいられない。6T’S、レゲエ、スカ、ジャズ、マンボ、リズムアンドブルース、パンク、ニューウェーブ、カリビアン、昭和歌謡、ロマにジプシー… 過去の音を色濃く反映しながらも、全く新しい森ラッピンサウンドを創り出してきた。そんな彼がs-ken & far east sessionsに参加することが決まった。5月14日の東京イーストサイド東上野のYUKUIDO工房での初ライブを控える氏に話をする機会を得た。
ー 森雅樹とs-ken & far east sessions
far east sessionsは、s-kenさん(Vo)と佐野篤さん(Ba,Per,Cello,etc)とヤヒロトモヒロさん(Per)の三人から始まっていて、それに加えてゲストで原田芳宏さん(Steelpan)、中山うりちゃん(Acc,Tp,Vo,Cho)、僕がギターで入る感じです。数曲入るんだけかなと思っていたら、全曲参加なのでもうゲストじゃないなってのはあるんですけどね(笑)。
東京の人でパンク通ってる人であれば、やっぱり東京ロッカーズです。フリクションとか持ってる人なら「おぉっ!s-kenや!」ってなりますよね。でも 僕の中のs-kenさんは、もうちょっとワールドミュージックなんです。マルコム・マクラーレンのアフリカンなソロの感じが近いと思っていて、音楽性としては、やっぱりストリート・カルチャーがベースにあります。やっぱり普通じゃない感じで、ちょっとノーウェイブっぽい匂いが s-kenさんの中にはあると思います。
s-kenさんは、常にセンスの良い音楽を目指してる。歌のムードとしては『*ゴロワーズを吸ったことがあるかい』の時のかまやつさんとか、リントン・クウェシ・ジョンソンの雰囲気が近いかもしれない。s-kenさんのそこを目指す貪欲さがほんま好きですね。
ー フォーマットを壊しながら普通じゃない音を探る
僕がやってるってことも「ど」が付かない。ど南国でもないし、どラテンでもないし、どジャズでもないし、ちょっと混じってるフェイクな感じです。音数を少なくして、隙間を感じるやつですね。例えばラテンのルールとかマナーがあって、上に乗っかるものは、ルールに従わない。基本のルールはあるんですけど、そのルールを壊していく感じです。そういう意味では、far east sessionsとEGO-WRAPPIN’の曲作りは似てるかもしれないですね。気持ちの良い違和感を探してる感じです。
僕の中ではパンクもひとつのロックとして捉えてる感じです。王道なパンク・ロックは、曲とメロディーに合わせたダムドとか、バズコックスとか、ピストルズもそう、僕の中で音楽的にポップなんです。エッジの効いてるアート・リンゼイとかがギャリガリガリとかやってる感じとか、ジェームス・チャンス・アンド・コントーションーズの感じ、あれは基本JBスタイルやけど、もうちょっと壊したJBやからな。僕は、ああいうギターに凄いパンクを感じますね。
ー オリエンタルmeetsスイングのミクスチャー感
僕は、スカとレゲエも別のもとして聴いてました。スカは*デタミネーションズのバンドから入って、そこからスカタライツに入っていく感じです。で、そこからジャマイカのスタジオワンとか、コクソンとかサウンドシステムがかけてた音楽、アメリカのニューオリンズR&Bだったりダウンビートの『*ノー・モア・ディギン』とか、ああいう細っいシャッフルみたいなものにもスイングを感じますね。
*デタミネーションズ(DETERMINATIONS)
オーセンティック・スカをベースとして南海の音楽をルーツに圧倒的なライブ・バフォーマンスで魅せる大阪のバンド。マイティ・スパロウの“Under My Skin”のカバーは伊達男が通うクラブで一度は聞いたことがあるだろう。ルードボーイが辿り着く日本のスカバンド。
*アーサー・キット(Eartha Kitt)
エキゾチックな魅力を持ち“歌って踊って演技する声優”の元祖と言って過言はない。個性派シンガー、女優、キャバレースター。森氏が語るのは1955年に「証誠寺の狸囃子(Sho-Jo-Ji)」を英語で歌い、日本でもヒットさせたチューン。エキゾチック音楽好きが辿り着く偉大なるスターの一人。
*ギャズ・メイオール(Gaz Mayall)
The Trojansでピアニカを持って踊りまくる日の丸はちまきの男。彼が主催するGaz’s Rockin` Bluesは1980年ロンドンでスタートし今では最も長く続いているクラブイベントである。彼がプレイするレコードを聴いて多くのアーティストがシーンを作り巣立っていった。世界一音楽を楽しんでいる人間の一人。
江利チエミさんとか、あの時代のビッグバンド系にもスイングを感じるし、録音の感じも60’sのスカとかジャマイカ・レコーディングの響きに似ています。バックが東京キューバンボーイズですしね。民謡だけど、もはや民謡じゃない雰囲気、座敷にフルバンドが入ってるムードがカッコいいでしょ!?例えば、アメリカが日本を解釈するとフェイクなムードがありますよね、アーサー・キットとかが演ってる「しょ、しょ、しょうじょうじ~♪」とか、ギャズの感じもそういうところがありますよね。
*東京キューバン・ボーイズ
1949年に見砂直照によって結成。中南米、ラテン、マンボを日本に紹介した功績は大きい。音楽好きが辿り着く日本を代表するラテンバンドの一つ。
ー 東京イーストサイド・リアル・ブルース
僕が、東京のイーストサイドに来たのは20年近く前ですけど、住んでるから特別な感じはしないけど、この雰囲気が好きですね。山谷とかの方は、大阪の下町のムードに近いものもある。浅草の水上バス乗り場の辺りで小銭稼ぎしてる一斗缶のおっちゃんがおるんですよ。一斗缶叩きながら、ハーモニカを吹いてる。「てててっつっ、てててっつっつ♪」って。デルタ・ブルースみたいで、めっちゃかっこいいんすよ。もともとはフルセットでちゃんと叩いてたドラマーのおっちゃんやったみたいですけど、最近ちょっとうるさいって言われたらしくて、一斗缶が発泡スチロールに変わったんです(笑)。こもってミュートされて、それがまたいい音してて最高なんですよ。本当にそういうリアル・ブルースなノリ。それでいて浅草寺でやってる東京大衆歌謡団にも一緒にジョイントしたりしてる。古い歌謡曲をやるのよ、ちょっとマイクから離れて直立でね。ほんま藤山一郎みたいなやつで凄いよ。ジプシー・スイングじゃないけど、なんかそうロマ・ミュージックのムードにも聴こえて来るし、それがいい感じなんですよね。(了)
*デルタ・ブルース
アメリカのミシシッピ川流域で生まれたブルースの聖地。ロバート・ジョンソン 、チャーリー・パットン、サン・ハウス、ブッカ・ホワイト、スキップ・ジェームス、エルモア・ジェームス、マディ・ウォーターズ、ビッグ・ビル・ブルーンジー… シンプルな曲構成であるにも関わらず個々のオリジナリティが半端ない。その後の音楽スタイルの全ての礎となっていると言っても過言ではない。
〈PROFILE〉
1996年 大阪で結成されたユニット。 メンバーは中納良恵(Vo、作詞作曲)と森雅樹(G、作曲)。大阪出身の二人で結成時から関西を中心に活動を続け、 現在は拠点を東京においている。
2000年に発表された「色彩のブルース」は、 戦前のジャズから自然に行き着いたキャバレー音楽や 昭和歌謡を消化し、 エゴ独自の世界観を築きあげた名曲として異例のロングヒットとなり、 その名を全国区で知られるようになる。 以後作品ごとに魅せられる斬新な音楽性において、 日本の音楽シーンにおいて常に注目を集めている希なアーティストだと言える。
二人の織りなすエゴ・サウンドは、 ジャズやロックといった音楽がジャンル名に成り下がる以前に もっていた自由な雰囲気と熱い情熱、 そして何よりも私達が生きる時代の感覚を敏感に反映して いる。 音楽と真摯に向き合い、 ジャンルというくだらない壁を軽やかに乗り越え、 聴き手に音楽の 本当の楽しみ方を教えてくれるポップスセンス。 聴くものの心にダイレクトに届くであろう、 うた ごろろ。 エゴが届ける名曲名演、 それはロマンスに溢れた平成のミラクルであろう。(公式ページより)
<ライブ情報>
ー s-ken & far east sessions ー
s-ken(Vo)
佐野篤(Ba,Per,Cello,etc)
ヤヒロトモヒロ(Per)
ー GUEST ACT ー
森雅樹(Gt)from EGO-WRAPPIN’
原田芳宏(Steelpan)
中山うり(Acc,Tp,Vo,Cho)
日程:2023年5月14日(日)
時間:OPEN 16:30 / START 17:30
場所:東上野 YUKUIDO工房(東京都台東区東上野4-13-9)
http://yukuido.com/original/(JR上野駅から徒歩3分)
料金:前売¥5,000 / 当日¥5,500(+1drink別途)
チケット:https://t.livepocket.jp/e/ax5ah
〈取材協力〉
バーニューデューテ
〒111-0021 東京都台東区日本堤1丁目11-5
電話: 050-5216-4821
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