Loading...
AKIRA BLAKE-KIKUCHI / Pan Records / Pre War Blues Laboratories

AKIRA BLAKE-KIKUCHI
Pan Records / Pre War Blues Laboratories

February 15, 2019

72回転で録音して78回転で聴くと、132セントつまり半音(=100セント)と32セント上がるんです。100セント以上あがった時に、戦前の録音にあるみんな同じ声で歌う感じ、ヘリウムガスを吸ったみたいな甲高い声になるんだ。

三分の録音をする場合、ミュージシャンに録音のスタートとストップをランプで知らせる。例えば2分45秒のところで残り15秒をランプで知らせる。ランプを見て15秒で終われないと失敗テイクで大事なアセテート盤が無駄になってしまう。そこを72回転に落とすと15秒くらい保険がかけられる2分45秒で知らせれば残り30秒ある。仮にオーバーしたとしても3分10秒くらいのところでは終わってくれる。こういうことの繰り返しを色々やっていたと思うんです。例えば72回転で録音して78回転で聴くと、132セントつまり半音(=100セント)と32セント上がるんです。100セント以上あがった時に、戦前の録音にあるみんな同じ声で歌う感じ、ヘリウムガスを吸ったみたいな甲高い声になるんだ。

1920年代のB♭管楽器のカタログには「クイックチェンジB♭to A」というキャッチコピーがたくさん掲載されている。どういった意図で半音下げる必要があったのか?クイックチェンジを使えば“ハーフステップマジック”の録音が出来る。例えば半音低いキーで演奏し73.5回転で録音して売る、リスナーが78回転で聴くと半音きっちり上がった演奏が聴こえる。研究所では、これを“ハーフステップマジック”と呼んでるんだ。演者が聴いてもキー上に問題ないから、そういうマジックがかかった演奏があったのかもしれない。試しに“ハーフステップマジック”を解くと圧倒的な臨場感が蘇ってくるんだよ。「作り手の側の常識は、一般の人の非常識」そういった公表されない音楽史の事実は当たり前にあることだと思う。「信じてたのにそんな訳ない!」という論議ではなくて、現象として事実として捉えた時に「何故こうなったのか?」ということを探って行けば新たな事実が分かってくる筈なんです。

*ハーフステップマジック(=HALF STEP MAGIC):
戦前ブルース音源研究所が当時の録音方法の一つとして名付けた呼びで半音マジックとして発表。

科学というよりも、実はそういう感受性の鋭い人が気づかなければその数値は出てこないんだ。結局感じられるのも人だし、それを感じられないのも人なんだ。

聴覚能力は、人種や個々によって個体差があって同じ音を聴いても同じようには聴こえていない。例えば10人の白人に、今奏でたジャズの演奏を半音高く修正して聴いてもらって「どちらが心地良いですか?」って聞くと八割が早い方を選ぶんだ。同じ質問を日本人の研究所メンバーに聞くと八割がたは遅い方を選ぶ。「どちらが本当ですか?」という質問ではなくて好みなんだよ。これが共感を得る上で物凄い大きな障害になってる。人種や個人差によって“ハヤマワシ”の方が心地良いから直す必要がない!と言われちゃう。何故なら感じてない人に感じろと言ってもそれは無理な話でしょ!?でもそれは事実とはまた別次元の話だよね。

音楽が大好きな人の感性の方が“ハヤマワシ”を直せる比率は高いと思います。だって現象を科学的に説明すると色んな要因ではっきりしないし、絶対を求めると運と時間がとてつもなく必要になってくる。好きとか嫌いとか、良いなとか嫌だなとか、そういう気持ちの中の感じ方は科学では証明できないんじゃないかなと思うんです。そして音楽は、そういうことで動いてるんだと思う。大雑把にいってしまえばミュージシャンが「これ“ハヤマワシ”だよ!大体このぐらいの回転数だよ!」って言うところが正解ですよ。例えば、CDを聴いただけで「なんかこれ遅い!」たった30セントのそこに気づく人がいて報告を受ける。それを受けて初めて周波数測定器にかけてみてようやく数値が出てくる。だから科学というよりも、実はそういう感受性の鋭い人が気づかなければその数値は出てこないんだ。結局感じられるのも人だし、それを感じられないのも人なんだ。だから感受性豊かな人たちと関わってると見えてくる世界があるよね。だから本当にその人たちと一緒にいたいですね。

ずっと感動でしたね。ブルースに物凄く詳しくて本当に大好きなんだなって思った。その音楽に対する愛情に物凄く後押しされましたね。甲本さんや真島さんたちがいなかったらパットンのTRUE REVOLUTIONは発表できてなかった。

甲本さん真島さん、あの二人は凄いですよ。車の中で発表前のチャーリー・パットンのTRURE REVOLUTION(=2017年6月14日にPAN RECORDより発売される“ハヤマワシ”の修正音源)を流してたんです。車に入るなり、甲本「あっ違う!これもう売ってるんですか?出てるんですか?」菊地「いや、まだ確かめ算終わってないんで出てないです。」甲本「うわぁぁぁーすげーぇぇぇー」すぐに言うんです。うわーこの人たちの耳半端ない(笑聲)。きっと音楽を感じる能力が凄く繊細なんだと思う。研究所にいらっしゃった目的は、“ハヤマワシ”を修正したロバート・ジョンソンのSP盤を聴いて感じたいということだったと思います。実際にはロバート・ジョンソンはもちろん、その他のアーティスト達の多くのSP盤を聴き楽しいひと時を過ごしました。凄く凄く素晴らしい体験でした。共通だし話が凄く盛り上がるから、みんなその場を離れたくないんだね(笑聲)。真島さん、トイレに案内されてるんだけど話を先に進めて欲しくないから「ポーズ!ポーズ!!ポーズ!!!」ってみんなにポーズしてトイレに行ってさ(笑聲)。楽しい人たちだなと思ってさ。こういう人たちと出会える、音楽やってて本当に良かったなって思った。真島さんがトイレ行ってる間に「ちょっとギター弾きなよ!」って言われてギターを弾く機会があった。ビッグ・ビル・ブルージーの『Guitar Shuffle-Hey Hey』と『Pig Meat Strat』を繋げたアレンジを弾いたんだけど、この曲はビッグ・ビル・ブルージーが珍しく二人でギターインストやってる曲なんです。それを自分がベースラインとメロディをいっぺんにひとりでやるんだけど聴き終わるとすぐに甲本さんが「ビッグビルのセッションのやつだ!」って言うんです。たくさんいる戦前ブルースギターリストの数え切れない曲の中から一発で名前が出てくるなんて!? ずっと感動でしたね。ブルースに物凄く詳しくて本当に大好きなんだなって思った。その音楽に対する愛情に物凄く後押しされましたね。甲本さんや真島さんたちがいなかったらパットンのTRUE REVOLUTIONは発表できてなかった。

 

Latest Issue