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AKIRA BLAKE-KIKUCHI / Pan Records / Pre War Blues Laboratories

AKIRA BLAKE-KIKUCHI
Pan Records / Pre War Blues Laboratories

February 15, 2019

例えばロバート・ジョンソンのすべてを網羅した『The Centennial Collection』というアルバムが出てる。このアルバムを作るためにレコードメーカーさんに音源を提供した人から、イコライザー処理がされていない素材のままの音源を手に入れたんですよ。しかしこれが78回転で再生されておらず、ピッチが適当で自分の心地よいところで再生されている。今までにリリースされてる同じ楽曲と、手に入れた音源のタイムがどれくらい違って、音程誤差がどれくらいあるのかを全て数値化しないと分からない。『The King of Delta Blues Singers』『The Complete Recordings』『The Centennial Collection』とロバート・ジョンソンのアルバム音源はどれも違う回転数なんです(笑聲)。

出来れば元素材をここに全部集めて同じターンテーブルで、同じ回転数で再生したという状況にしないと検証の確度が低くなってしまう。ロニー・ジョンソンもメタルマザーから音程聴き取って回転数を見つけてるわけだけど、メタルマザーをこれだけ集めないと統計が取れないわけだし、いま売られてるCDは元のソースが正確じゃないから原盤がなきゃダメなんです。ブレイクの録音は、初めから終わりまで全部検証したんだ。レコードもほぼ集めたから、“トレースピッチ”を測って楽曲のキーからの誤差を数値化して、それをまた回転数に変換していく。あとブレイクがいつも使ってるコードフォーム、弾き方、使うキーとかでだんだん絞れてくるんです。一人のミュージシャンをやろうと思うと、全部のSP盤集めて一からやらないといけない。お金と時間がかかる気が遠くなる作業なんだよ(笑聲)。

*メタルマザー:
レコード製作の過程で作られる音源が含まれる金属盤。市販されるシェラックやビニール素材のレコードをプレスするためのスタンパーを作るために必要になる。レコード針による劣化や、経年変化に左右されない驚くほど澄んだ音を抽出することが出来る。

*トレースピッチ(TRACE PITCH):
レコード盤の溝と溝の間隔のこと。戦前ブルース音源研究所が録音した時の回転数を見つけるための科学的根拠を探すために測り始め、トレースピッチ理論として発表。メーカー毎に決まりがあったわけではなく、同じメーカー、同じ日の録音でも間隔に誤差があることが証明された。

演者の技術や楽器の特徴を踏まえた上で、20年代のエンジニアがどういう基準で設定をしていたのか?どうして“トレースピッチ”を変える必要があったのか?当時と同じ考察に立ち返り、そこから始める必要があった。

蓄音機の時代は、動力がゼンマイだから正確な回転数は出ないんだ。B面聴いてるうちに動力の元気が無くなってきてモワモワーってなっちゃう。再生する側が録音した回転数と同じで聴けるとは限らないのが前提だし、その時代の商品作りはメディアの中に音があって、遠くに持ち運べて、未来にその音を運べることが最大の目的。だからといって録音した側がデタラメやったということではなくて、例えば80回転を設定したのであれば理由がある。でもリスナーには関係のない話だから公開はしない、伝えない何かがあるんだ。演者の技術や楽器の特徴を踏まえた上で、20年代のエンジニアがどういう基準で設定をしていたのか?どうして“トレースピッチ”を変える必要があったのか?当時と同じ考察に立ち返り、そこから始める必要があった。

アコースティック録音の頃は、生の声をラッパで集音してそのまま録音するから音圧が管理しきれない。これがエレクトリック録音になると、アンプリファイドした音に出来るようになるわけだ。そうすると好みの低音をグッと持ち上げたりとか出来るようになる。高音を減衰させ音圧を上げると、横振幅が大きくなって隣の溝に干渉してしまう。だから“トレースピッチ”を広くしないといけなくなる。広くすると録音時間が短くなる。それだと困るから、限られた面積で音圧を高く長く録るために録音の回転数を少し下げた低速録音をするほか手段がない。もともと基準があってそうなったわけではなくて、試行錯誤してるうちにその基準が出来たというだけで、各社が同じ回転数に落ち着く必要はなかった。だからエジソンレコードは80回転、ビクターは78回転、他のメーカーはそれぞれでやってた。

 

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