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AKIRA BLAKE-KIKUCHI / Pan Records / Pre War Blues Laboratories

AKIRA BLAKE-KIKUCHI
Pan Records / Pre War Blues Laboratories

February 15, 2019

自分のブルースの捉え方はまず音、音のマイクロトーンの表現の仕方、リズムと間(ま)の取り方。ここがブルースという音楽の最たるところで他の音楽と大きく違う部分なんだ。いわゆる黒人の間(ま)、そこが凄いところなんだよ。

自分は、パンクがきっかけで音楽の世界に足を踏み入れたけど、あっという間にあらゆるジャンルを聴くようになった。あの頃はフュージョンが良かった、高中正義さん、マイケル・シェンカーAC/DCとかもめちゃくちゃコピーしましたね。どんどんルーツを遡っていくからビートルズなんか全く聴かないくらい飛び越える(笑聲)。勿論ビートルズも良い曲だけど、技術に関しては単調だし、さほど難しくない。全体を通すと皆に分かり易くてグッとくる曲なんでしょうけど、自分みたいな演者には満足いかなかったんでしょうね。だから飛び越えてマディー・ウォーターズを聴きましたね。

マディーは、パンクやロックから比べるとスローなんだけど、自分にない間(ま)で拍が取り難い。音程とリズム、タイミングの間(ま)が単調じゃない。自分がこれまで聴いてきた、または持っていた感覚とはまったく違った。兎に角マディーは、スライドの音も調子っぱずれで全然キーに合ってないところで止めるしウォャンウォャンウォャンっていう変なギター音を出すし。うわっ!何この下品な感じって思ったの(笑聲)。自分の中のルールと大きく外れた感じがあった。これまで自分たちは、音楽をピアノが基本としてでしか習ってこなかった、1オクターヴを12等分した平均律、これが音だったんだ。ギターはチョーキングでその間の音を表現できる、でも普通その間の音は譜面には正確には書けないよね。自分のブルースの捉え方はまず音、音のマイクロトーンの表現の仕方、リズムと間(ま)の取り方。ここがブルースという音楽の最たるところで他の音楽と大きく違う部分なんだ。いわゆる黒人の間(ま)、そこが凄いところなんだよ。

ブレイクと同じ様に演奏したいから練習するけど絶対に真似できない。絶対この小指こんな早く動かないから!人間技じゃないんだけど、誰も真似のできない技術があるからこそ凄いわけだよね!?そう信じて練習するけど、絶対に無理なんだよ、“ハヤマワシ”なんだよ。(笑聲)。

タイムリーな音楽は普通に楽しめて良かったけど、戦前ブルースはどうしても違和感があった。高校二年生の頃、ヤードバーズ(=かつて千葉県市原市にあった音楽喫茶)で「ブルースといえば最後はロバート・ジョンソンだ。これ聴かなくちゃダメだ!」って言われてLPを買いに行くんだ。それでレコード店の店員が試聴で大音響でかけてくれるんだけど、お店にいたお客さんも自分も全員が何じゃこりゃ!?って顔になるんですよ(笑聲)。家に帰ってきてレコードに針を落としても1曲聴けず、次、次って表裏をもう数十分もかからず聴いちゃった。ビート感あってロックンロールのルーツな感じはするし確かに上手なんだけど「ふーん、、、。」って感じで、いわれてたロバート・ジョンソンの衝撃が全くなかった(笑聲)。でもちょうどその頃、映画『クロスロード』が公開されてて、その映画のなかの演奏(ライ・クーダーがサントラを担当)を観て感動したんだよ。ストーリーも面白かったしね。それでもう一回しっかり聴いてクロスロードに挑戦しようって思ったの。コピーし始めたらキーがBとBフラットの間くらいのオープンG系チューニングでこの演奏はないなって事に気がついたんだ。昔のレコードって“ハヤマワシ”なんじゃないの?って思った。それでヤードバーズの先輩に言ったんだ。

菊地「レコード買って聴いたけど、コレ“ハヤマワシ”じゃない?」先輩「そんなわけないだろ!何回転で聴いたんだ?」菊地「普通に33回転だけど」先輩「45回転で聴いてないか?もっとたくさん聴いてみろ」そんなやりとりで誰も信じてくれなかった。それでたくさんの輸入盤レコードを聴いていくと最終的にブラインド・ブレイクに辿り着くの。片っ端から聴いた中で、兎に角ブレイクが一番凄かったの。ブレイクと同じ様に演奏したいから練習するけど絶対に真似できない。絶対この小指こんな早く動かないから!人間技じゃないんだけど、誰も真似のできない技術があるからこそ凄いわけだよね!?そう信じて練習するけど、絶対に無理なんだよ、“ハヤマワシ”なんだよ。(笑聲)。でも因果なことに、その“ハヤマワシ”に感動してしまったんだ。それが“ハヤマワシ”じゃなければここまで来れてなかったかもしれない。だから“ハヤマワシ”全否定ってわけじゃなくて、あるがままなんだ。

*ハヤマワシ(=HAYAMAWASHI):
戦前レコードの多くに見られる早い再生音源の呼びで 日本語カタカナ表記の“ハヤマワシ”は戦前録音の音楽を聴くリスナーに広く周知されている。

*33回転(レコードの回転数):
音楽を記録するレコードは規格によりSP(standard playing)、LP(long playing)、EP(Extended Playing)などの種類があり、再生回転数も78回転、45回転、33回転、16回転と様々である。

*オープンG:
ギターのチューニング法のひとつ。通常のギターは、6弦からE-A-D-G-B-Eで調律するが、典型的なオープン・チューニングでは、開放弦の状態で鳴らした時に、GコードやDコードなどの長和音になるように調律する。

あれを聴いた時に、これがブルースだって思ったんだ。歩くリズムも歌も別物でまったく違うんだ。兎に角、自由なんだ。なんか本当に凄い。もうでかいバケツをザブってやられた後に、パコンってやられた感じ。(笑聲)

2001年にメンフィス・ブルース・フェスティバルに出るんだ。ステージでチューニングしてるとエレキギターを繋いだおっさんが邪魔するんだよ。わざと大きい音出したりするのね、こっちはアコギの小さい音なのに感じ悪いなと思ってさ(笑聲)。それでちょっとラグタイムチックなフレーズを弾くと、下からバンマスみたいな奴がレッドベリーみたいだなとかいうわけ。「レッドベリーじゃねーよ!ブレイクだ!見てろよ!これから本物のブルース食らわせてやるから!」って本当おこがましいと思わない?日本から来てさ(笑聲)。でも根がパンクだし邪魔されたりしてるからさ。それで演ったらこれが大盛りあがりで最後はバンドのドラムとベースが上がってきて大セッションでブワーっと盛りあがって終わったんだよ。

 

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