枠外にある服、創作落語、衝動、歴史上にない服、原点、魂、時間。COMOLIの魅力と、小森の魅力(2/2)
COMOLIの魅力と、小森の魅力
日常の中心にある文化の根っこから紐解かれ、多くの思考を経て作られるCOMOLIの服は、究極の日常着。目にみえる実用的な意匠、そして目に見えない文化的な背景が潜む服からは、色褪せない音楽と同じ様に、初期衝動を思い出させてくれる。COMOLIの服を知るには、小森を知る他に方法はない。

枠外にある服
就職活動も特にせず、文化を卒業した後、唯一興味のあったある国内のブランドに手紙を送ったけど返信がない。その扉も僕には開かれなかった。結局なんとなく求人広告を見て応募したベイクルーズという会社が採用してくれたんです。希望はレディースブランドの企画だったのですが、そこには空きがないということで何故か当時フレンチカジュアルだったメンズブランドに配属されました。
白のマリンパンツにボーダーのバスクシャツにスカーフを巻く…、なんとも甘い感じのするスタイルが正直苦手でした。僕的にフランスといえばクールなコムデギャルソンシャツ、A.P.C.、アニエスベーです。当時、バサバサのロングヘアーで、モヘアのカーディガンに古着のコーデュロイ519にデカバキスニーカーを履いた僕は完全に異分子でした。
アメリカのワークパンツ、フランスのワークパンツどちらも同じ作業服です。だけどUSを履いてる奴は男っぽいんだけど、ヨーロッパのワークパンツを履いてる奴はちょっと神経質ぽい。USだとカッコいい、フランスだとオシャレになる。僕的には「オシャレですね」と言われるより、やっぱりカッコいいと言われたい。
そこから会社もオールジャンルに進んでいきますが、結果的にベイクルーズが、USの服と、ストリートの服しか知らなかった僕の枠の外にあった欧米の洋服を沢山教えてくれました。
創作落語
もう一つ大きな事があります。後にデザイナーの森万恭さんと一緒に仕事ができた事です。当時の森さんの服作りに対するアティテュードは本当に真摯でした。
森さんは例えば、抑揚のないアメリカのブルックス・ブラザーズのシャツと、抑揚のあるイタリアのルイジボレッリのドレスシャツを、独自の視点で編集しどこにもないボタンダウンシャツを作った人です。日本人が正統に、変な切り貼りを一切しないで、日本人が着るならこれだろう!という台襟の高さ、襟のロール…そうやって直球でボタンダウンを作った最初の日本人です。
自分の根底にある好みとは違いましたが、当時は日本のどんなデザイナーズブランドよりも森さんの作る服、世界観の方が圧倒的にセンスもクオリティーも高かったと思います。
「服作りは、創作落語と一緒だ」ということを彼から教えてもらいました。あたかもあったかの様な服。実際にこんな服は存在しないんだけど、模倣じゃなくて、創作落語の様な服を作るんだという事、僕にはその言葉が染み付いているんだと思います。
衝動
二十代で世界中のファッションに触れてきたけど、若い日本人が頑張って提案するスーツスタイルだけは凄く苦手でした。フィレンツェにいるブラウンスーツを着たオヤジがカッコいいのは、骨格と風格と文化的背景があるからです。憧れるのはわかりますが、服と人と生活と街が合わないとどうやってもコスプレにしか見えないんです。
僕は欧米から来る舶来モノがカッコいいと言われて育った世代ですけど、日本とは気候も人種も様式も違う国で生まれた洋服が、日本で生活し、日本人である自分にはフォルムも素材も、身体と生活に合ってないなと思い始めてきていました。
ジャストサイズで服を着たくても欧米人のような骨格ではないし、大きめのサイズを着てなんとなくごまかすしかないというか…、結果40歳手前でようやく気づいたんです。かっこいいと思う服はあるけど自分が似合う洋服が世の中にないことに。風変わりなことはせずに直球で、ただただ自分が着たい洋服を作りたい。この衝動が自分でブランドを作ろうと思ったきっかけです。

歴史上にない服
僕は歴史上にない、どこにもない洋服を作っているつもりです。だけど他人が見てもどこを、何をデザインしているのか解らないと思います。ただ僕の服を着て歩いている姿を見れば、その揺らぎとかフォルムとか、何かしら感じるはずですし、袖を通したら、理屈ではなく身体が感じると思います。
人を高揚させる服が作りたいと考えています。僕の服を着てモテたって言われることが一番嬉しいんです。「素敵ですね」って言われる、すごくシンプルで良いなぁと思うんです。
人は本能的に魅力を求め、次の世代へつなげようとするもの。だからこそ、「それを着たら魅力的に見えるのか?」が凄く大切だと思います。
原点
自分が何かをする時に動きの妨げになるようなデザインはしたくないんです。スニーカーが被っちゃう裾口の広いパンツとか、無駄にデカい服とか、人が一番カッコよく見える時、それは本人が服を着ている意識がなく何かをしている時だと思います。
アスリートでも、アーティストでも、その一瞬においては服を着ている意識がない筈です。だから何かに熱中している人、厳しい環境で生きている人ほど服がカッコよく見えるんです。
ルック撮影の時、僕はいつも後ろから全体を眺めていますが、僕の服を着たモデルさんより、泥んこになって撮影をしているカメラマンの方がカッコいいんです。それにはどうやっても敵わない。やっぱりそれが服の原点だと思います。
魂
どの時代にも偽物はいます。今は他人のデザインをパクりながら上質な生地と良いパターンと良い工場で服を作って、イケてるスタイリスト、カメラマン、演出家に依頼すれば、パリコレだってやれるし老舗の服屋も買ってくれるような時代です。そんなブランド達と同じ土俵で服を表現するのは正直地獄ですよ。
ファッションから一定の距離を置きたいのに、どんどん距離を詰めてこようとする偽物達、自分が好きだった素材なりスタイルがどんどん気持ち悪くなる感覚。自分自身がまだ中途半端だからそう感じる事はわかってはいるんですが…、偽物と虚しかないこの業界で気持ちを保つのは正直苦しいです。
とにかく自分は魂が入った本物しか見たくないんです。
やっぱり『ヨイトマケのを唄』を歌っている美輪明宏を、僕は聴きたい。魂を感じます。音楽で鳥肌が立つ経験をする人は多いと思いますが、僕は衣服でそこを目指したいと本気で思っています。まずは僕自身の鳥肌が立つのか、着てくれる人にもそれを感じてもらえるのか、それだけをいつも考えています。
時間
自分本位に生きようと思うとお金がないとできないです。だから僕はモノを所有したいんじゃなくて、自分が自由に生きるためのツールとしてお金を使いたいと思っています。
それは贅沢に聞こえるかもしれないけど、移動手段であれば、そこに最短で行くために、宿泊であれば、他者と遮断した時間を過ごすために。それにはお金がないと出来ないんです。だから僕は、時間と自由を得るために稼ぐことを厭わない。
やはりデザイナーが経営者がじゃないと説得力がないと思います。誰かのお金でとか、どこかに所属してだと責任が自分だけに来なくなる。囲われないことで感覚が研ぎ澄まされていく。
僕が生まれてきた意味ってなんだろうと最近よく思うんです。服を作ることで出会えた人とか、稼げたお金とか、どれくらいの人が知ってくれたのか?
自分の生まれてきた意味を知りたいんです。
自分はただ、それだけのために生きているんだと思います。【了】
☞ 二面性、コンプレックス、ミロス・ガレージ、初日、デザイン、マインド。COMOLIの魅力と、小森の魅力(1/2)
【Profile】
Name: 小森 啓二郎(こもり・けいじろう)Keijiro Komori
DOB: 1976
POB: Tokyo
Occupation: COMOLI Designer
1976年生まれ。東京都出身。文化服装学院を卒業後、大手セレクトショップに入社。デザイナーとして10年勤めた後、独立。2011年に自身のブランド「COMOLI」を立ち上げる。“全ての洋服の原型は欧米から生まれ、ある目的の為に作られた物である” この考えを基に、その時の気分や感覚を取り入れた洋服を提案している。
https://www.comoli.jp
https://www.instagram.com/comoli.official/
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